長く勤めた自分にしか書けない、そんな記事を。

自分の診た肉を食う、ということ。

 
 
 
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たく かずと(ペンネーム) 某県で20数年公衆衛生獣医師として勤務し、退職。 家族とともに地元の自然と旬の味覚を存分に味わう日々を楽しんでいます。

「出かけよう、外へ。」の続きです。)

いただきまーす!第3話で豚の頭検査覚えたての一平が、近所の居酒屋で豚の頭のハズシ肉をほうばるシーン。
私の好きな場面のひとつです。

あのですね、こればっかりは体験してもらわないとわかんないと思います。

ふらりと立ち寄ったスーパーで「今日はすき焼きにしよ。」とか「豚しゃぶがいいかな」とか言いながら、自分が検査したはずの肉をみんなが楽しそうに買っていくのを目の当たりにする。
そして自分が検査した肉を、自分で食べる。
こんなこと、獣医じゃなきゃ、そして自治体に入ってと畜検査員や食鳥検査員になってなけりゃできない体験です。
ああ、俺は間違いなく獣医だったんだなあという瞬間です。

日本全国、ご当地ブランドの牛や馬、豚、鶏、羊がありますよね。
それらはほぼ、地元のと畜場や食鳥処理場で解体されたものです。地元スーパーやお肉屋さんで扱ってくれていますよね。
検査所勤めを始めたら、ぜーったい、食べないとダメですよ!
きっと見え方も、味の感じ方も変わります。
また、よく分かんないなりに、他のブランドの肉と比べるようにもなります。

こうやって食肉にぐいっと興味が出てくると、ふらりと立ち寄った食品売り場のお肉コーナーも、なんとなく素通りできなくなっちゃったりします。(笑)

私は家畜保健衛生所と保健所も経験しました。
なので、そのブランド肉を生産している畜産農家さんからお肉屋さんまで、仕事で出入りさせていただいてたりします。
そうなっちゃうともう、お肉コーナーで地元ブランドのパック肉を手に取っただけで、農家さんの顔から自分の検査シーン、と畜場から出荷していく食肉業者の若い運転手さんの顔からパック肉を小売りしているお肉屋さんの若社長の顔まで、ぜーんぶ繋がって見えてきちゃうんです。

こんな体験は、と畜検査員と家畜保健衛生所の家畜防疫員、保健所の食品衛生監視員を渡り歩いた人間だけにしかできません。大学とかでも「from farm to table」なあんてカッコいい言い方で紹介されますが、それを現場で実地に体験し、実態も課題もぜーんぶ目の当たりにする。
そして体験を踏まえ、食肉の作り手と売り手がどう結び付いていけば、地域で暮らすみんながおいしいと言いながら幸せに楽しく暮らしていけるかを一生懸命考える。

大方の獣医学生さんは動物の診療をしたいと考えて大学に入ったのだから、なかなかイメージが湧かないかもしれません。
けれど今ご紹介した仕事が、昔々から獣医さんが地方公務員という身分でやってきていた、おっきな仕事なんです。
前の時代を大きく引きずりながら今に至りますが、今の時代だって、やんなきゃいけない仕事なんていくらでもあります。

あまり考え込まないで、まずは自分で食肉の生産と流通の現場を見てみて、食べてみる。
その上で、いろんなことを感じていただけたらいいなあと思います。

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