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私が体験した家保、食検、保健所はこんなところ

2020/11/01
 
 
 
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たく かずと(ペンネーム) 某県で20数年公衆衛生獣医師として勤務し、退職。 家族とともに地元の自然と旬の味覚を存分に味わう日々を楽しんでいます。

私が実際に体験した家畜保健衛生所、食肉衛生検査所、保健所はこんな職場でした。
それぞれに獣医としてのやりがいを感じれる場面がありました。

あなたの個性に合う職場かどうか検討するお手伝いになれれば幸いです。

家畜保健衛生所(家保)

正に家畜生産の現場が仕事場です。

仕事は大きく言えば二つ。
ひとつめは、平時から病気が侵入したり広がらないようにするための「防疫」。
そしてもうひとつは、死亡や流産などの問題が発生した時に、その原因を特定して対策を指導する「衛生指導」です。

私も実際にあらゆる家畜生産の現場に行きました。
牛以外の現場はそれまで全く入る機会がなかったので、とても新鮮でした。
牛、豚、馬、羊、鶏、蜂といった、あらゆる家畜を相手にします。

私の地域では牛、豚、鶏がメインでした。
家保に入ったばかりの頃は、目の前の作業を訳も分からないまま必死にこなす日々。大学の教科書を机の下に持ち込んで、事あるごとにこっそり開いては、そうか、そうだっけ、と確認してました。
国家試験が終わった途端に頭から抜けちゃってました、なんて口が裂けても言えませんでしたからね。(笑)

大動物がメインの大学だったので、大学の講義と仕事が直結した体感。

私は家保という職場の予備知識が全くなかったので、ああ、大学で頭に詰め込まれた事がこういう職場で生きてくるんだな、と、変に納得してしまった記憶があります。
大動物をメインにしている大学を出た獣医さんなら、大動物臨床に続いて最も志向しやすい職場だと思います。

農家の目の前で大事に育てている家畜から採血やサンプリングをします。
保定や採血がうまくなると一気に株が上がり、農家のおじさん達や農協担当者ともぐっと仲良くなりました。
それに大動物臨床の獣医さんとは頻繁に仕事で一緒になります。
こんな臨床の獣医さんチックな体験もできるのが家保のいいところでした。

国や県でやりなさい、という衛生事業がとても多く、春から秋にかけては毎日なんやかんやで牛や豚、鶏の血液を抜きまくっていました。
やはり採血は保定が命。保定がうまいと農家の方から誉められたりなんかすると、もう嬉しくなっちゃったものです。

採血が終わると、今度は持ち帰った検体を処理し、検査。
次から次から検体が来るので、さっさとやらないとあっという間に検査室が大渋滞。
そんな時に限って、解剖が入ります。
体が空いてる人がどんどん手伝っていかないといつまでも終わらないのが、解剖。でかい牛だと捌くだけでもほんとに大仕事でした。

防疫と衛生に担当が別れてはいるものの、人手が足りないので結局みんなやることになります。
外回りや検査の傍ら、統計事務や文書事務。
公務員なんて暇な職場なんでしょ?なんて言う人がいますが、そんなら家保の仕事やってみろ、と私は言いたいです。

上司から若手まで、よく働く職場でした。
いや、後から後から湧いて出てくる仕事に獣医さんみんなが追いまくられてあたふたしている、というのが正解でしたね。

地味で忙しいけど、家畜生産をしている農家の方々の下支えをしている、という事を、日々実感できました。

「農業(畜産)」をキーワードにして獣医さんの仕事を考えているなら、家保は絶対おすすめです。

保健所

この職場のキーワードは「人」です。

飲食業、食品製造業、食品販売業、ホテル・旅館業、理容・美容業、動物取扱業などの許認可事務と衛生指導が平時の業務です。
そして食中毒や不衛生な食品の回収、レジオネラ症患者の発生、犬猫のトラブルなどの問題が発生した場合には、これらに速やかに対処します。

毎日、色んな業種の様々な人達、住民の方々と会います。
冷静な人ばかりではありません。各種苦情やトラブルの渦中にある人からは思わぬ言葉を浴びせられることも珍しくありません。

また、職場では薬剤師さんや保健師さん、栄養士さん、一般事務職の人と一緒に仕事します。所長はお医者さんですしね。
まさに人とのコミュニケーションの日々です。

獣医さんとしての存在が発揮される場面は大きく二つ。
ひとつは、食中毒やレジオネラ調査の際、感染症に関する情報集積と分析をする局面。
もうひとつは動物関係のトラブルへの対処です。

それぞれ、経験と知識が絶対必要です。
また、最新の知識を絶えず仕入れて自分のものにしておき、いざというときにすぐ使えるようにしておかなければなりません。
食品苦情や犬猫トラブル事案は何の前触れもなく一本の電話で突然職場に舞い込んできます。
いつ来てもいいように、私も毎日、暇を見つけてはいろんな雑誌やネット情報に目を通し、心の準備をしてました。

毎日がスリリング。けど、肩透かしを食うぐらいなんにもなくすんなり仕事が終わることもあります。
そんな日々を一緒に過ごしているので、職場の人達とのつながりは深かったです。

保健所の人達は、私は好きでした。

いろんな人達とのつながりの中で仕事をしていくのは嫌じゃない、と思える人は、保健所に向いてます。

<参考記事>
「獣医さんなら知っておきたい、保健所の食品衛生監視員はこんな仕事」

食肉衛生検査所

「大きな工場みたいなとこで解体ラインから流れてくる肉とかを延々と見ながら切った張ったする単調な毎日なんだろなあ。」
私もこの職場に入る前は、そう思ってました。(笑)

でもやってみると農場によって病変の出方が凄く違う。季節やロットの変わり目でも変わる。
それを毎日俯瞰できていることに気付きました。
何かの会合で大動物臨床の獣医さんにその事を話したのをきっかけに思わぬコラボレーションができ、とても有意義な体験をさせてもらいました。

と畜場は情報の一大集積基地です。

やりようを工夫すれば大動物臨床獣医や農家、企業や大学といくらでもコラボレーションできます。
こんな立ち位置で仕事してる獣医は、食肉衛生検査所の獣医だけですよ。
学生さんや、これから転職しようとしてる若い獣医さんにはこの事を一番伝えたいです。

食肉衛生検査所がただの単調な職場になるかどうかは、実はあなたの考え方次第なのです。

私は食肉衛生検査所勤務が一番長かったので、その職場のいいところ、悪いところをいっぱい見てきました。

私の実体験を、獣医師を目指す学生さんや転職を考えている獣医さんに伝えたい。
その思いから書いたのが「衛生獣医、木崎勇介(食肉衛生検査所編)」です。
名前や組織名、人物構成を変えてありますが、ほぼ実際にあったエピソードと受け止めていただいて結構です。

興味がある方はそちらもご覧ください。

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