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若手獣医師が公衆衛生職場に見切りをつけるもうひとつの理由

2020/11/01
 
 
 
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たく かずと(ペンネーム) 某県で20数年公衆衛生獣医師として勤務し、退職。 家族とともに地元の自然と旬の味覚を存分に味わう日々を楽しんでいます。

「マニュアルに書き尽くせない技術の習得には熟練者が欠かせない」の続きです。)

「衛生獣医、木崎勇介」平成23年で、けなげにも仕事をやり遂げた若手。
しかし、同時にこうも考えます。

技術職公務員は専門技術や知識・経験を武器に仕事をする人材。
なのに、例えば食肉衛生検査所で時間をかけてようやくひとつの専門技術を身に付けても、保健所や動物愛護センター、県庁など、全く違う分野へ異動すると異動先では前のキャリアがほとんど活かせない。
次の職場で新しい技術・知識を再び積み上げても、また違う分野に異動。

数年を経て元の分野に戻っても、その数年の間にどんどん新しい技術や知見が導入されたり、法令の改正や運用の変更が指示されているため、技術や知識のブランクを埋めるのにかなり手間取る。

キャリアに何度もリセットがかかる・・・。
いつまでもレベルが上がっていかない。

自分は専門技術と知識・経験を武器に仕事をしていきたいが、転勤を避けられない自治体では難しそうだ。
ならばいっそ、別の獣医分野へ転向しようか・・・。

若手獣医師が公衆衛生獣医師職場に見切りをつけるもうひとつの理由がここにあると、私は考えています。

「広く浅く獣医職場を経験させて、県庁や総合支庁の頭の切れまくる事務方と堂々と渡り合いながら県政を企画提案していける獣医師を育て、獣医職の職域の拡大や予算確保など、事務方に対しての発言力や影響力を維持する。」
これがこれまでの自治体の獣医師上層部が描きがちな人材養成コンセプトでした。

自治体という大きな組織の中で獣医師が職域を確保し続けるためには、県庁の中で獣医師の存在感を出せる人材の確保は確かに必要です。

しかし、獣医領域の検査技術や社会ニーズは日々微細に渡り深遠化しています。
「最新の食品・食肉検査技術に精通した人材」
「世界中の情報・知見をフル活用して感染症や動物施策にあたれる人材」
「所管する地域の特性や過去の案件に精通し、地域の関係者と有機的なコミュニケーションをとれる人材」
広範な知識で事務方へ企画提案していける人材だけでなく、こうした骨太のスペシャリストを今の社会は間違いなく求めているのです。
そしてそういったスペシャリストになれる資質を持ち合わせた人材を、私は食肉衛生検査所や保健所で数多く見てきました。
またおそらく、これからもスペシャリストを志向する若手獣医師は間違いなく出てくるでしょう。

しかし組織は彼らにも「企画提案者」になることを求め、色んな分野を経験させようとする。
ここにミスマッチが生まれる。

そして多くの人材が苦悩し、迷走を始める・・・。

私はこう思います。

「公衆衛生獣医師職場の人材育成コンセプトは3本柱。ひとつは企画提案者の育成。ふたつめは今の社会ニーズに応えることのできるスペシャリストの育成。そして最後に、彼らに後進を預けてその専門性やDNAを引き継がせること。」

県庁内の職域確保ばかりに目を向けず、技術職本来の哲学に足場を置いた人材養成コンセプトを今こそしっかりと自覚し、実践していかないと、公衆衛生獣医師職場は間違いなく若手の獣医さんからどんどん見放されていくと、私は考えます。

「『仕事がつまらない』は何かを求めている証」に続きます。)

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たく かずと(ペンネーム) 某県で20数年公衆衛生獣医師として勤務し、退職。 家族とともに地元の自然と旬の味覚を存分に味わう日々を楽しんでいます。

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